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    glass_yogore
    高校に入ってモテたいという理由だけで始めたバンド。去年の学園祭は人が集まらず散々だったから、今年こそは多くの人の目に留まる、パンチの利いたパフォーマンスをしてやろうと思う。勉強なんてそっちのけで、学校が終わるといつもメンバーで集まる練習場がある。町はずれにある工場の建物を、そのままちょっと改装したようなスタジオだ。ただ同然で借りられるけど、音響設備や防音設備なんてない。もっとも、こんな田舎の町はずれ。大きな音を出したって、民家は少し離れているし、問題ない。ただ、防音設備どころか建物自体が古いから、とにかく暑さ寒さが半端ない。そもそも元が工場っぽいだけに、窓ガラスなんて隙間だらけだし、壁もトタン板や波板だったりする。要するに、外気がそのまま内部に伝わるような建物だ。

    どの窓ガラスもひどく汚れていて、自然に曇りガラスのようになっている。外から覗かれるような心配はないし、そもそもあまり人が通らないのだが、音が筒抜けだから中で何をやっているかはバレバレだ。そして大きな音を出すと、そのまま音が窓ガラスに伝わり、割れてしまうのではないかと思うほど振動している。風の強い日などは、風で窓ガラスが揺れているのか、音に振動しているのかわからないくらいだ。

    追試で他のメンバーの到着が遅れた際、たまたまスタジオ内がどこかの焚火の煙で臭かったので、窓ガラスを開けてみようと試みた。でも窓ガラスは壁に組み込まれているかのようにぴったりくっついて、開けることはできなかった。窓ガラスの枠自体が錆びていることに加え、工業用の油なのか、よくわからないものがこびりついて固まってしまっているのだ。

    どこかしらから隙間風は入ってくるのに、窓ガラス自体は開けることができないこの窓は、汚れで明かりとりの役目すら果たさず、なんのためについているのか、全く意味不明の代物だ。

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